前回の続きを書こうと思っていたら民主党の代表選がはじまり、武生国際音楽祭でバタバタしているうちに代表選が終わり、その結果に驚いているのもつかの間、今度は尖閣諸島の問題が起きた。
私が三十年前に立教大学の仏文を出て最初に入った会社は、てっきり編集プロダクションだと思っていたら広告代理店だった。入社試験のようなものはなく面接と作文だけだったが、その題は「広告の社会への役割」というようなものだった。
広告などというものにはまるで縁がなく、まだその時点では「コピーライター」という職業があることすら知らなかったくらいなので、本来なら「広告は消費を刺激し、また企業と消費者をつなぎ云々」とでも書くべきだったのだろうが、こちらの頭にそんな用意はなかった。
とはいえこちらは哲学を勉強した身でもあり何かまともなことを書かなくては恥である。そこで捻り出したのがこんな理屈だ。
------ 広告はみんなが見る物である。企業が広告を『見せる』ということは、企業が『見られる』ということだ。広告だからといって嘘の情報を出したら、いつかその会社は潰れる。そう言う意味では広告は一種の批評媒体でもあるのだ ------
この咄嗟に考えたことはずっと覚えていて、その後広告やCMを作る時の自分なりの物差しとなった。アメリカの「コピーライターの神様」みたいな人の本を読んだ時も「へえ、同じようなことを言ってる人がいるんだ」と思った。まあ大した理屈ではないのだけれど。
尖閣諸島の問題は宣伝力の争いでもあったと思う。一連の政府の対応に関しては、私は当事者ではないから判断する材料に乏しい。しかし宣伝という観点から見て三つの間違いを犯している。
その1 官房長官が「那覇地検独自の判断だ」と言ったこと
これは明らかな嘘なので、今後官房長官が何を言っても信用されなくなってしまう。こんな表現で何とかなると思う感覚が凄い。私だったら、この新政権がいかに悩んで苦渋の選択をしたか、未熟な部分もあったとの反省もこめて、官房長官に語らせる。当面叩かれるだろうが、嘘を言うよりは百倍ましだ。
その2 証拠ビデオを即座に公表しなかったこと
公判資料はおいそれと公表しないという習慣があるが、この場合あまり意味はない。とはいえ今さら出しても遅い。時間をかければ捏造ビデオを作ることができてしまうから。
その3 領有権が日本にあることをわかりやすく英語で発信しなかったこと
外務省のサイトにあるにはあるのだが、弱い。中国が領有権を主張し始める以前の地図とか、いくらでもヴィジュアル資料はあるはずだ。外国のマスコミがパッと見てわかる親切なページをなぜ作れないのだろうか。
この問題を受けて民主党議員の有志が「建白書」を政府に出し、いくつかの提言をしているが、この中に「政府の広報体制を拡充すべし」と加えるべきだった。
不幸中の幸いなのが、こうした日本政府の体たらくに呆れながらも、中国政府の強硬さに世界中が驚いたことだ。オリンピックや万博をやってイメージアップに努めても、その何割か、いや大部分がこの尖閣諸島問題でダウンしてしまったのではないだろうか。
私が三十年前に立教大学の仏文を出て最初に入った会社は、てっきり編集プロダクションだと思っていたら広告代理店だった。入社試験のようなものはなく面接と作文だけだったが、その題は「広告の社会への役割」というようなものだった。
広告などというものにはまるで縁がなく、まだその時点では「コピーライター」という職業があることすら知らなかったくらいなので、本来なら「広告は消費を刺激し、また企業と消費者をつなぎ云々」とでも書くべきだったのだろうが、こちらの頭にそんな用意はなかった。
とはいえこちらは哲学を勉強した身でもあり何かまともなことを書かなくては恥である。そこで捻り出したのがこんな理屈だ。
------ 広告はみんなが見る物である。企業が広告を『見せる』ということは、企業が『見られる』ということだ。広告だからといって嘘の情報を出したら、いつかその会社は潰れる。そう言う意味では広告は一種の批評媒体でもあるのだ ------
この咄嗟に考えたことはずっと覚えていて、その後広告やCMを作る時の自分なりの物差しとなった。アメリカの「コピーライターの神様」みたいな人の本を読んだ時も「へえ、同じようなことを言ってる人がいるんだ」と思った。まあ大した理屈ではないのだけれど。
尖閣諸島の問題は宣伝力の争いでもあったと思う。一連の政府の対応に関しては、私は当事者ではないから判断する材料に乏しい。しかし宣伝という観点から見て三つの間違いを犯している。
その1 官房長官が「那覇地検独自の判断だ」と言ったこと
これは明らかな嘘なので、今後官房長官が何を言っても信用されなくなってしまう。こんな表現で何とかなると思う感覚が凄い。私だったら、この新政権がいかに悩んで苦渋の選択をしたか、未熟な部分もあったとの反省もこめて、官房長官に語らせる。当面叩かれるだろうが、嘘を言うよりは百倍ましだ。
その2 証拠ビデオを即座に公表しなかったこと
公判資料はおいそれと公表しないという習慣があるが、この場合あまり意味はない。とはいえ今さら出しても遅い。時間をかければ捏造ビデオを作ることができてしまうから。
その3 領有権が日本にあることをわかりやすく英語で発信しなかったこと
外務省のサイトにあるにはあるのだが、弱い。中国が領有権を主張し始める以前の地図とか、いくらでもヴィジュアル資料はあるはずだ。外国のマスコミがパッと見てわかる親切なページをなぜ作れないのだろうか。
この問題を受けて民主党議員の有志が「建白書」を政府に出し、いくつかの提言をしているが、この中に「政府の広報体制を拡充すべし」と加えるべきだった。
不幸中の幸いなのが、こうした日本政府の体たらくに呆れながらも、中国政府の強硬さに世界中が驚いたことだ。オリンピックや万博をやってイメージアップに努めても、その何割か、いや大部分がこの尖閣諸島問題でダウンしてしまったのではないだろうか。
これも明らかにマイナスのプロモーションであり、失敗だ。隣国に警戒させる口実を作ってしまったのだから。優秀なエリート集団である中国政府の官僚たちがそれに気づかないわけがないが、政府としては国民の手前ああいうスタンスをとり続ける他なかったのだろう。
その意味では宣伝力という課題は日中両国ともに持っていると言えるのだ。 - この稿終わり -