シュナイトの札幌交響楽団定期出演は大成功だった。曲目はブラームスのヴァイオリン協奏曲と「田園」。ソリストは神尾真由子。2回公演の定期の両日ともチケットは完売だった。初日は「田園」のあとにすぐ拍手が起こらず深い感動的な沈黙がホールを包み込んだ。2日目は2曲とも仕上がりがよく、ブラームスでは神尾真由子がより思い切った表現に挑み実にスリリングだった。オケもシュナイトの音楽をよく理解し、永年のコンビのように演奏した。マエストロ自身も大変満足し、痛む足を引きずりながら何度もカーテンコールに応えた。満場の拍手とブラヴォーを舞台袖で聴きながら、この小さな老体のどこにそんなパワーがあるのだろうかと唸らざるを得なかった。
シュナイトに興味を持つオーケストラは他にも複数あると聞いたが、膝の状態が思わしくなく、一年以上先のスケジュールを決めるのは難しい。札幌滞在中シュナイトと話をしながら今後への意欲は確認できたが、またあらためて日本に呼んでどこかのオケを指揮するというのはなかなか現実的ではない。せめて神奈川フィルが年に一度でも定期的に呼び寄せる計画を立ててくれていたら、他のオケが相乗りする形でシュナイトの知名度を全国区にできたはずだけれど。
何事にも終わりはあるのだと以前書いたが、そう言い切ってお終いにしてしまうのがあらためて悔しくなるほど、シュナイトの音楽は深かった。